おのひろきさんのところのメーリングリストBD-MLで、麦草峠アタック2002の参加表明を投稿してしまいました。
行くと書いた以上は行かねばなりません。当然、標高2000mを超える麦草峠を皆と登るわけです。自転車半年の初心者としては、正直不安があります。雨が降ったらどうしよう、空気がうすくて体調を崩したらどうしよう、などなど。
そこで、今回は、麦草峠に向けて、長距離で、しかも、けっこう上りのあるハードなコース、小豆島一周を企てました。
時刻表をながめ、神戸元町の中突堤(なかとってい)から高速船に乗って行けば日帰り一周が実現しそうです。
朝は5時に目が覚めました。少し二度寝して、6時半過ぎに部屋を出ることにします。五島産業汽船の「びっぐあーす」の朝一の便は8時に神戸中突堤を出るようです。
阪神電車で元町まで行き、中突堤に電話します。時刻表によると全席指定要予約のようです。でも、実際はガラガラのようで、乗ってみると1階は自由席扱いになっていました。
荷物置き場に折りたたんだBD-1を置いて座ります。
朝食をとっていないので、船内の売店が開くのを待って、少しでも腹の足しにとリッツビスケットを買って食べます。
先日てるちゃんと行った古本市場で買った二十四の瞳を読みます。予習というか、せっかくだから。
1時間半ほどで小豆島(しょうどしま)の坂手(さかて)港です。
船を下り、BD-1を組み立てます。青空、青い海、緑の山。山は垂直の岩肌を見せてそそりたっています。
夏の日差しの下、買ったばかりのデジカメOptio230で数枚港の写真を撮ります。装備を整え、出発です。
これも本日初の実戦投入のハンディGPS「etrex Vista日本語版」はなかなか良い感じです。地図表示も、速度計表示も見やすく良い感じです。速度表示はmap21と比べて低速の追従性が良く、サイクルコンピュータ代わりに最適です。
地図表示も階調を使い、見やすいです。map21のように、駅や観光地をポイント登録してあれば使いやすいのに、こちらは高速道路や住所詳細などが多く、だいぶ使い勝手が落ちます。地図の斜めスクロールができず、スクロール中はmap21と違ってポイントが表示されないのでわけのわからない場所までジャンプしてしまいます。逆に、ズームイン・アウトはmap21より少し速いのでこちらを多用するようになります。少し速いというより、ズームアウトすると自動で詳細ポイントを非表示にするのが良いです。map21はここが欠点でした。でも詳細道路表示も非表示にされてしまうのは、自転車用としてはmap21にだいぶ劣ります。
感度はmap21と比べ、とりたてて良いようには思えません。というか、衛星信号のロスト/キャッチがクイックな感じです。
いずれにせよ、「etrex VISTA 日本語版」は「ポケナビmap21」の半分の大きさ重さです。また、電池も単三2本で動作し、保ちも倍以上です。自転車では少しでも重量を減らしたいので、機種を乗り換えました。
正直なところ、値段は高いものの、間違いなくおすすめです。ハンディGPSを持っていない方は迷わず買いでしょう。etrex LEGENDの方なら高度計を省いて18000円安いので、そちらの方が一押しかな。日本地図の道路表示機能は必須だと思いますけれど、電子コンパスと気圧高度計の必要性は、正直、特にないような気がします。
etrex VISTA日本語版を利用しながら、内海(うちのみ)側に出て、海岸沿いに岬の分教場を目指します。
「二十四の瞳」の大石先生も、一本松から岬の分教場まで二里を毎日自転車で通いました。その道?を、BD-1で軽快に走ります。
景観を楽しみながら、岬の分教場に到着です。ここは実際に昭和46年まで使っていたもののようです。入場料200円ですけれど、二十四の瞳映画村との共通券750円にしておきます。
分教場は教室が三つあるだけの小さな建物です。「一年生の漢字」の張り紙を懐かしく眺めます。廃校になった年からするとリアルタイムだなあ。
分教場を出て、ちょっと先に行くと、二十四の瞳映画村です。中をざっとみます。土産物屋の群れと、ロケ用の分教場が建っています。ロケ用の分教場は先ほど見た本物とそっくり同じに作られています。オルガンは見栄えの良いものになって、しかも後ろ向きに配置されているのが、ああ、映画だとこうなるんだなあ、と納得します。
坪井栄文学館は面白そうなので、じっくり展示を見ます。岩井栄の夫壺井繁治がプロレタリア文学者・・・。坪井栄って女性だったのね。知りませんでした。
外へ出て、売店でソフトクリームを食べます。
さあ、島の西端までここからお気楽に海沿いサイクリングです。まずは坂手港まで戻ります。さらに内海湾に沿ってぐるりと景色の良い海辺を楽しみます。マルキン醤油の工場があります。醤油の香りというか、なんか納豆の匂いみたい。小豆島はあちこちに醤油工場があるようです。
ときどき停まって砂浜に下りたり、缶コーヒーを飲んだりしながら走ります。内海湾の景色は素晴らしいです。
軽い峠を越えて、池田港です。さらに、土庄(とのしょう)に入ります。
さらに土庄港まで走り、平和の群像まで行きます。二十四の瞳の像です。ふと見ると、その向こうに山がそびえています。そういえば、ここからコースはきびしい登りになるはずです。そうして、たどりつくのは、あの山?あの、絶壁の上?
(このとき見えていた山は皇踏(おうとう)山で、山頂でもわずか394m。実際自転車で登ったのはもっと島の中心部で、最高高度は733mでした)
ちょうどお昼を回ったので、定食屋に入りきつねうどんを食べて休みます。
ここからは、思ったよりも強烈な山登りのようです。六甲山に似て、というよりは、そう、屋久島を思いだすような海上にそそり立つ山の島です。
まずは銚子渓、美しの原高原を通って寒霞渓(かんかけい)へ。最大18%の急勾配だそうです。
うどんを食べ終わってからjornada568をぷちぷち。
土庄港から土庄の町なかまで戻ります。「世界一狭い土淵海峡ギネスブック登録」と表示があります。そうなの?
伝法川に沿って上流へ進みます。左右には恐ろしげな崖をまとった山が切り立っています。やがて、川沿いの道も上りとなってゆきます。小馬越近くではだいぶしんどい登り坂です。
なんとか馬越を制すると、下り坂です。ぐんぐんスピードは上がって爽快ですが、この直後に激坂があるということですから、内心(あんまり下らないでくれー)と思ってしまいます。
落石注意の標識が目立つ中を登っていきます。道の近くでガサガサとなにかが動いています。大きい。猿かな?
しばらく登っていくと、また別の猿が視界をよぎります。その先では、猿がゆうゆうと道路を見下ろしています。おお。
登り道は左に右にと大きく切り返しています。「これより3.5km上り急勾配走行注意 斜度18%」という標識が立っている所が、銚子渓でした。なにか「銚子渓おさるの国」というのがあるようです。
とりあえず飲料を買って休憩します。jornada568をとりだしてぷちぷち。
ときどき「パーン」と、鉄砲の音?がひびきます。熊でも撃っているの?それとも石切り場のダイナマイト?鳥でも撃っているのか・・・。ちょっと恐いです。
はちみつレモンと爽健美茶を飲みほし、斜度18%にサア挑戦です。
しかしこれがどうにも進みません。とにかくきつく、とても走れません。今飲んだ水分をすべて汗にしてこぎます。
もちろん一番軽いギアです。それでも、すぐに30秒走っては1分休む、というペースになります。
そうして、30秒走っては2分休む、30秒走っては3分休むと繰り返します。しんどい。
休むのも、下りてしまうと坂道発進ができずに、フラフラよろける状態です。石垣に足をついたり、反射板のポールをささえにしたりして休みます。
GPSを見ても、ほとんど距離を進んでいません。etrex VISTAの高度表示の画面を出すと、えらい坂道を登っていることが分かります。
高度は500mくらいということは、麦草峠はこの4-5倍つらいのでしょうか?そんなのぼくにはとても登れません。
ほとんど泣きながら登っていき、ようやく美しの原別荘地(の予定地だった所?)の看板を目にします。そして、少しだけ登った先の四方指分岐点から、豪快な下りが始まりました。
寒い!汗でびっょりのTシャツが氷のようです。見晴らしの良い場所でBD-1を停め、リュックの底からゴアテックス雨具を取り出します。ウインドブレーカー代わりです。
ゴアテックスの雨具はなかなか良い感じです。しかし、腹を冷やしてしまったようで、調子がおかしいです。
寒霞渓にはいる所でちょっとだけ登りになっています。うー、トイレ。
寒霞渓ロープウェイ駅にたどり着くと、なんだかやたらと新しいトイレがあります。まさか有料?なんでもいいや、と財布だけ掴んで入ります。中も豪華というか、山の上のトイレとは思えません。
用を足して出てきました。結局、特に有料というわけではありませんでした。ふう、助かった。しかし麦草峠でもトイレの有無は確認しておかなくては・・・。
売店を覗くと、100%ジュースで、はっさくとスイートスプリングを売っています。買って飲んでみると、とても美味しいです。ヒットヒット。
さて、ここからは爽快な下り・・・と思ったら、しばらく上り坂が続きます。もう終わりだと思っていたのでダメージが大きいです。
しばらく上りを走ってから、ようやく待望の下りです。徐々にスピードが上がります。15km/h、20km/h、30km/h・・・。
路面を確実に見ながら、ブレーキをかけて速度を落としていきます。
ときどき景色がひらけると、最高!と叫んでしまいます。
坂手港に船で着いたときに絶望的な気持ちで見上げた岩山が、眼下はるか下に見下ろせます。
最高!
景色を楽しみながら、海岸線の草壁港まで下りきってしまいました。時間は16時35分。うーん、一本前の船が坂手港に入った頃だけど、急いでも間に合わないや。予定通り19時50分の便で帰ろう。
三時間ほど余ったので、午前中にスキップしたオリーブ公園に行くことにします。夕食食べよう。
朝と同じ内海湾沿いの道をゆっくりと走ります。意外にけっこう走って、オリーブ公園への登り口を曲がります。キツめのごく短い坂をゆっくり上って、道の駅に到着です。喫茶はあるけどレストランはなさそうです。オリーブ記念館の売店を眺めた後、東側の「サン・オリーブ」という建物に向かいます。なんだろう?
中に入ると、どうやら3階に温泉が、2階にレストランがあるようです。ラッキー、これこれ。
とりあえず先に温泉で汗を流すことにします。フロントで700円払って中に入ります。
露天風呂に入り、身体を伸ばすと、脚がとてもとても疲れていることに気付きます。こんなに疲れていたんだ。
温泉、気持ち良い〜。
この温泉は、正面に分教場のある岬を眺められます。つまり、二十四の瞳の大石先生の住んでいた一本松のあたりなのかもしれません。
この距離を毎日自転車で通うなんて、ごっついな。根性ある女先生という設定なんだろう。
ハーブ風呂やうたせ湯、寝湯など一通り入って、疲れた身体を温めます。この温泉はなかなか良いな、小豆島一周のコースとしては最後にここにくるのがおすすめのように思います。
小豆島一周自体は大変おすすめのコースですが、難易度は過去の「輪行@@」でも最も厳しいコースではあります。
着替えるとき、クールマックスのTシャツでなく、わざと綿のTシャツを選びます。お腹を冷やすのはもうごめんです。とどめに長袖シャツも着こみます。
温泉の後は夕食です。レストランも21時まで営業しているようです。
オリーブ定食を頼みます。量は少ないけれど、おさしみも鯛の切り身のオリーブなんとかもおいしいです。
jornada568を取り出してぷちぷち。
さて、7時になったので出発です。帰りの「びっぐあーす」9便は19時50分坂手港です。
ゆっくり走りますが、疲れているせいか、意外に距離があります。大石先生みたいに毎日岬の分教場に通うのは大変かもしれません。
そういえば、二十四の瞳で、1年生が岬から足を怪我した大石先生の家まで歩く話があったけれど、1年生にはとんでもない距離のような気がします。
そうして、坂手港に到着です。
GPSを見ると、76.8km走っています。今日はしんどかったなあ。淡路島以来かもしれない。
小豆島の雰囲気は、淡路島と言うより、屋久島にとても近い気がします。良い島だなあ。
港で、復路の乗船券と引き換えます。ジュースやココアを飲みながら船を待ちます。
ああ、疲れている。
乗船すると、ゴアテックスの雨具をかけて一眠り。寝過ごして大阪天保山まで行かないように気をつけよう。神戸は9時半頃到着です。
ハンディGPS「etrex VISTA 日本語版」のトラックデータ(trk020622.gdb trk20622.zip 34,795bytes)をカシミール3Dで表示し注記したものです。
まあ、イラストマップのようなものなので、正確な道や細部は、別途周辺のMapion地図等をご参照ください。
距離は76.8km、移動平均速度は16.8km/h、移動時間4h34m、停止時間3h25m、最高速度51.9km/h、全体平均速度9.6km/h、最高高度733m、総上昇量1303mでした。