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パソコンソフトCD-ROM

出版の意義、編集の価値が問われている。

新潮文庫の100冊 (5/7/00更新)

パソコン用のソフトとしての書籍データ販売は、いわゆるマルチメディアタイトルとしてとらえられ、数百円〜千数百円の紙の書籍に比べて、数千円〜1万数千円等きわめて高価でした。
CD-ROMのコストは5百円以下でしょうから、この値付けは理解に苦しみます。
たいてい、読者にとってとりたてて必要性のない画像や音声や音楽をつけて販売されています。
紙の書籍との差別化のためでしょうか?愚かとしか言いようがありません。
書籍が売れるのは、その内容によるものです。不要な挿絵が増えただけで数百円の本が1万円になって売れるとでも思っているのでしょうか?
しかも、データとして携帯機にコピーして持ち歩くこともできないのでは、金を払う価値などありません。

そんな中、まっとうな方向を感じさせてくれたのが、「新潮文庫の100冊」(16000円)でした。
パッケージ表紙写真
制作協力:NECインターチャネル株式会社、株式会社ボイジャー、大日本印刷株式会社
発行:株式会社新潮社
発売元:NECインターチャネル株式会社

なにしろ、100冊入っています。お得です。
安価に大量に、読者の手許に書籍を届けるという、メディア企業の活動としては見本のような商品でした。
また、新潮文庫の100冊という、出版社のおすすめの100冊を提示している点も高く評価できると思います。目当ての作品があって購入して、ついでに別の素晴らしい作品に追加の支払なしで出会えるのです。
そうです、書籍データの販売とはこうあるべきです。

問題は、通常の形式でのテキストデータが収録されていなかった点です。
これについては、単純な処理で変換した形でのデータが収録されているため、すぐに解析され、通常のテキストにコンバートするソフトが複数の人によって作成されました。ジャック川崎さんのソフトなどです。
本来、このようなソフトはメーカーできちんと用意しなくてはならないことなのですけれども。

再利用できないデータフォーマットにすることは、著作権の保護に全く寄与しないし、販売側にも売り上げを押さえる効果しかありません。
それは、ユーザーの不利益になるからです。こんな単純なことも理解できないのでしょうか?

本は、著者のものである以上に読者のものです。神経症的に過剰な不法コピー防止策に汲々とするより、それが読者にとってどんなに迷惑かを振り返って考えて欲しいものです。

パッケージ表紙写真「新潮文庫の100冊」が成功したため、その後、「明治の文豪」(7000円)「大正の文豪」(7000円)が出されました。
「明治の文豪」にはテキストデータが入っていますが、「大正の文豪」はエキスパンドブック形式のみです。
同様に、ジャック川崎さんによる通常のテキストにコンバートするソフトが作成されています。

全60編を収録した「シャーロックホームズ全集」(10000円)は、一人の著者の作品集ですけれど、愛蔵版と同じような魅力があり、紙の書籍を持っていても欲しくなるものです。
紙では困難でも、携帯端末では全作品をいつでも持ち歩ける、というのは電子書籍が紙と比べてはるかに優れた点のひとつだと思います。
「シャーロックホームズ全集」については、はじめから暗号化されていない通常のテキストデータも収録されました。
ただ、不要な制御情報がついているので、適当なスクリプトかかさはらさんのソフトで、切り落とすのが良いと思います。


使用権フリー作品集 (5/7/00作成)

PCで読書する人なんて、ほとんどいないのではないでしょうか?

長時間至近距離でPCやMacの画面を眺めて読書するなんて、正直、制約が大きすぎて今後の可能性を論じる気にもなりません。電車の中で、図書館で、畳に座って、椅子に座って、ねころがって、そうやって読書する可能性を潰して、PCの画面に向かい、ちらつく画面を注視し、電磁波にさらされ、ファンやHDDの回転による筐体共振ノイズの騒音にさらされて読書したいと思う方が少数派ではないでしょうか?

パソコンパッケージソフトとしての書籍データ販売は、パソコン利用者が増えるのと連動して増えているのでしょうか?どうもそうは思われません。
主原因はやはり読書行動を制約する形で商品企画しているからだとしか思えません。
本は第一に読者に入手しやすく読みやすいものでないといけないと思うのですけれど、パソコンパッケージソフトとしての書籍の現在は、読者の側に立った物の見方をしておらず、不法コピーへの過敏な防衛思想やパッケージソフトの流通販売の面から読者に不便を強いるのが当然として商品企画されているようにしかみえません。
快適な物語消費もできず、文学作品の電子的な活用もできず、作品の拡大再生産の道を閉ざすために技術を使うことにやっきになっているのが現状では、いくらパソコン利用者人口が増えても、これではなにも生まれないのではないかと感じてしまいます。

パッケージ背表紙写真 マイクロテクノロジー株式会社から、使用権フリー作品集シリーズ(各7800円)が制作、販売されています。
宮澤賢治童話全集
全98編の童話を収録。
宮澤賢治全詩集
800編以上の詩を収録。
太宰治全作品集1
太宰治の前期88作品を収録。
太宰治全作品集2
太宰治の後期74作品を収録。

Webやチラシなどに使うことを想定した「著作権フリー素材集」 のような自由度が魅力です。
宮澤賢治童話全集のパッケージの説明では、
宮澤賢治の言葉の海を、使い慣れた検索ツールやテキストビューアで自由に検索・閲覧できます。
また、モバイルコンピュータで全作品を持ち歩いて読んでいただくこともできます。
自分なりのオリジナル童話集を作ることはもちろんのこと、子供たちの教育用の資料を作って配付したり、童話全集として出版することも容易に行えます。
とあります。
太宰治全作品集のパッケージの説明でも、
モバイルコンピュータで太宰の全158作品(作品集1、作品集2合わせて)を持ち歩き、ちょっとした待ち時間や電車の中など好きなときにいつでも読むことができます。
学校教材や卒業研究の資料作り、インターネットのホームページ作り、雑誌、単行本の制作・出版など、使用権フリーならではの多彩な使い方が可能です。お使いになる方のアイデア次第で活用方法がどんどん広がります。
とあります。

こういった考え方が実際の商品としてでてきたことを喜ばしく思います。
青空文庫と比較しても、特定の著者の全作品を網羅していることは大変ありがたいです。自分のお気に入りが抜けていたり、ファイルが不完全だったりすることはありません。ルビや校正、語釈なども一貫した編集方針の下に作業されています。
読者にとって必要な編集作業や、パッケージングが施されているわけです。

収録されているデータ形式は、ルビつきテキスト、ルビなしテキスト、エキスパンドブック形式、ワープロ(MS-Wordや一太郎形式)と利用範囲の広いものです。
ルビつきテキストは、
《漢字》【かんじ】
という形式です。青空文庫形式とは異なり、ルビの対象範囲を特定できる形式となっています。
この形式は、WindowsCE用縦書きビューアである、Koji KatayamaさんのRubyReaderでサポートされています。

パソコン用パッケージソフトのため、値段が高めに設定されているのが敷居の高いところです。
それ以上に、店頭で見つけにくく入手性が良くないのが残念な点だと思います。
通信販売などで、もっと安価に提供してもらえると買う身にはありがたいです。
ともあれ、おすすめの商品です。

同様の試みが、著作財産権の消滅していない著作についても広がってほしいものです。


雑誌(ムック)付録CD-ROM (11/24/99更新)

この秋、アスキーの雑誌数誌で、青空文庫が収録されました。

たとえば、月刊アスキー.PC(ドットピーシー)11月号の付録CD-ROMにも収録されています。この雑誌はわずか490円です。
青空文庫のように、著作権フリーなデータの強みですね。

著作権切れの青空文庫のデータがCD-ROMに収録されたのはASCIIの以下の雑誌です。
誌名値段発売日
アスキー.PC(ドットピーシー) 11月号490円9月24日
DOS/V ISSUE 11月号890円9月29日
マックピープル 11月1日号680円10月15日
月刊アスキー 11月号890円10月18日
マックパワー 11月号980円10月18日
DOS/V ISSUE 12月号890円10月29日
今後も、アスキーの雑誌に青空文庫が収録されることがあるようです。

思えば、CD-ROM付の雑誌というのは書店のパソコン雑誌売り場に溢れかえっています。
ところが従来、そのCD-ROMに収録されるデータはどれも似たり寄ったりの内容で、シェアウェアやフリーソフト、広告データ、試用版のソフトや動画データ、市販ソフトや周辺機器用ドライバのアップデート等でした。
大容量低コストのCD-ROMメディアでも、コストをかけずに中身を埋めるには、広告だらけの紙メディアと同様の構成になってしまうことが多いのかもしれません。

CD-ROM媒体による配布は、とても安価にできるという好例と言えると思います。


新潮文庫の絶版100冊 (5/7/00作成)

パッケージ表紙写真 紙の本と比較すると、欠点ばかりが目立つように思えるパソコンソフトCD-ROMに、こんな試みが現れました。
絶版ばかりを集めた書籍データ集「新潮文庫の絶版100冊」(16000円)です。

絶版といっても新潮文庫に一度は収録されたものです。なかなか魅力的なタイトルが並びます。
絶版や版元切れで再販予定なしの書籍はその本の商品寿命の最期であるだけでなく、入手したい読者にとっては大きな悲しみの元です。古本屋を丹念に探すか、図書館で探して貸出期間だけ読むか、いずれにしても欲しい本が注文しても手に入らないのは困ったことです。

オンデマンド出版も、なかなか全面的な対応にははるかに遠い状況ですから、このようなCD-ROM化は歓迎できるものです。

エキスパンドブック形式しか収録されていないのが相変わらず理解に苦しみます。

今の時期にこういったパッケージを発売するなら、WorkPadやザウルス、WindowsCEマシンへのインストール手順までサポートした形にするのが当然ではないかと思うのですけれども。販売数をわざわざ少なくしたいのでしょうか。

収録されているエキスパンドブック形式のデータは、EBK2Tで無事テキスト形式にできました。


文市の小箱茶室ケーキ小箱LX紅茶[読書]-[CDROMソフト]/ 自転車好み他伝言板リンク

文市(あやち)=青野宣昭