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EB(電子ブック)とEPWING規約CD-ROM辞書

オープンな利用が鍵。 (10/3/99更新)

1987年、広辞苑のワープロ(OASYS)用CD-ROM化の際、紙の辞書をただテキストデータにするだけでなく、辞書の本文に検索用のインデックスや関連項目へのリンク、外字などのデータを加えた形にする必要性がありました。
岩波書店富士通等により、「広辞苑第三版CD-ROM版」は汎用電子出版物を念頭において作成され、これはWINGフォーマットと呼ばれました。

SONYが、音楽用シングルCDと同じ大きさの8cmCD-ROMを利用した電子辞書であるEB(電子ブック)規格を定めて商品化を行い、ソフト面でも辞書データフォーマットを定めました。検索用インデックス構造はWINGフォーマットと同様の形になっていました。
EB(電子ブック)は、シングルCD-ROMを入れるキャディ等のハード面も決められ、専用の閲覧用ハードが販売されました。これがSONYの電子ブックプレーヤー(SONY DATA Discman)です。
規格の普及に熱心なSONYによって、様々な出版社がこのEB(電子ブック)用のタイトルを作成し、現在も販売されています。普及団体の電子ブックコミッティーも1990年1月に設立され、現在でも電子ブックカタログの作成等の活動が行われています。
現在では、辞書に限らずガイドブック、電話帳などの実用書も取り揃えられ、約240タイトルに達しています。海外版も100タイトルほどあるようです。

EB(電子ブック)規格はその後、音声データ(ADPCM圧縮音声形式)の再生等について拡張され、従来の日本専用のEBと海外専用の(1バイト文字のため漢字非対応)EBGから、国際的に統一されたEBXA規格として定められました。1995年以降の電子ブックはこのEBXAによるものです。さらに、1998年には16階調表示のS-EBXAという拡張も行われています。

12cmCD-ROMの辞書データフォーマットについては、WINGフォーマットを発展させてEPWING規約が定められました。1996年、規約の一部がJlS−X4081(日本語電子出版検索データ構造)として制定されました。
その後もEPWING規約は音声再生などの拡張を続け、対応したビューアも各社から販売されています。
EPWING規約による辞書データも50タイトルほど販売されています


基本的にEB(電子ブック)はかなで検索語を指定しますが、EPWINGでは漢字を含む検索も可能になっています。EB(電子ブック)は外字データを辞書ファイルの中に含んでいますが、EPWINGでは別ファイルとなっているなど、細部は異なりますが、基本的には同種のフォーマットとなっています。
以下に規格の種類を整理してみましょう。
メディア規約名概要内容
8cmCD-ROMEB電子ブック国内版旧規格(1994年まで)1990年
8cmCD-ROMEBG電子ブック海外版旧規格(1994年まで)1990年
8cmCD-ROMEBXA電子ブック国際統一1994年
8cmCD-ROMS-EBXAEBXAの拡張16階調表示1998年
12cmCD-ROMWINGOASYS用広辞苑第三版EPWINGの元フォーマット1987年
12cmCD-ROMEPWINGCD-ROM辞書用規約ワープロ、PC、Mac用1991年
12cmCD-ROMEPWING V2.0EPWINGの拡張カラー図版表示、ADPCM圧縮音声再生1993年
12cmCD-ROMEPWING V3.0EPWINGの拡張MPEG-1の動画再生 
12cmCD-ROMEPWING V4.0EPWINGの拡張圧縮やハードディスクインストール機能 
12cmCD-ROMEPWING V5.0EPWINGの拡張JPEGなどのマルチメディア機能拡張や数式表示などの表現系機能 
データ構造のみJIS X-4081日本語電子出版検索データ構造EPWING規約の一部のJIS化1996年

EPWING規約はワープロやパソコン等での幅広い利用を考えられているのに対し、EB(電子ブック)は専用電子ブックプレイヤーでの利用を前提に考えられていました。
EB(電子ブック)について、専用キャディーから取り出して、パソコンのCD-ROMドライブで、MIYAZAKIさんのDIC.EXEや志村さんのEB.EXEのようなDOS用オンラインソフトで電子ブックを閲覧するのは、当初一部のパソコンユーザーが勝手に行っていたことでした。
1994年に電子ブックコミッティーは電子ブックの8cmCD-ROMを専用キャディから取り出してパソコンのCD-ROMドライブで利用することを認めました。

ハード販売指向のみの規格では、なかなかこうはいきません。これ以降、PCやMac用の電子ブック閲覧ソフトが開発され、販売されるようになりました。
こうして、EB(電子ブック)は専用プレイヤーを持っていなくても、パソコン等で閲覧することができるようになり、用途が格段に広がったのです。
市販のパッケージソフトのみならず、MS-Windows用には、KazumaさんのDDwinという優れたフリーソフトが作成・公開されています。他にも、EAST/SONYよりViewIng lightというソフトが無料で配布され利用できます。HP100/200LX用には、おgさんのEBR.exmというソフトが作成されています。

こういったソフトを活用し、辞書を引いてそれを引用または利用して文章の作成ができる環境というのはすばらしいものです。逆にいえば、それすらできないのでは利用価値半減と言ってよいでしょう。
なお、EB(電子ブック)でもEPWING規約でも、フォーマットの一部にタイトル毎の保護情報の設定項目(表示・引用・印刷)があります。

辞書データは、編纂に多大な労力を必要とし、そのデータ容量も小説などとは比較にならない大きさになることが多いです。大容量データの配布メディアとして、CD-ROMは大変適しています。
しかし、「CD-ROMドライブに常にその辞書CD-ROMを入れておかなければならない」というのは、ユーザーの使い勝手からすると望ましいことではありません。
特に、大容量のHDDを内蔵したノートPCが普及するにつれ、CD-ROMの内容をそのままハードディスクに複写して、複数の辞書をいつでもどこでも使いたいという要望が生まれてきました。
こうしたユーザーの「いつでもどこでも」要望に応えていくのが、CD-ROM辞書がさらに普及していくための必要条件と言えると思います。

その意味で、現状、市販の仮想CDソフトや、太田純さんの電子ブック/EPWING活用ユーティリティーソフトEPWUTILなどは利用価値が高いものです。

ハードウェアの軛から離れて、はじめてユーザーにとって使い勝手の良いものになるのです。
ユーザーにとって優れた辞書は、買う価値のあるデータです。そして、電子ブックプレーヤーやCD-ROMのハード云々よりも、優れた辞書を利用して文章作成等を行うことが自由にできることこそが望まれることです。

EBXAやEPWINGには、これからもオープンな形で発展して、ユーザーにとって使い勝手の良いものになってほしいものです。

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文市(あやち)=青野宣昭