分類を通して、全体像をつかんでいきましょう
「なになにというブランドがいい」
「どこそこのアップルティーが好き」
「なになに農園のファーストフラシュを買っている」
というのは、嗜好品だから、まあ、それもおっけーなのですけれど、ちょっと販売/購買活動よりかな、と思います。
まずは産地による紅茶の違いを知り、自分で紅茶を淹れて楽しんでみるところからはじめるのがおすすめではないかと思います。
カップにティーバッグを入れてお湯を注いだり、喫茶店のメニューが紅茶を知る知識源になっていると、なかなか全体像を意識しにくいものだと思います。
ここでは紅茶という飲料の位置付けを、まず分類を通して全体的に見てみましょう。
(もちろん、「好きなもの、紅茶、ケーキ、小箱」というように主観的に並べるというのも、とっても良いと思うのですけれどもね。)
たとえば以上のような分け方をすると、ハーブティーや麦茶と、紅茶の違いが分かります。
喫茶店のメニューや缶入り飲料の自動販売機では並列されるだけで違いを意識できないものも、こういう分け方をするとひとつの整理にはなると思います。
喫茶店のメニューから入ると、アイスティーとホットティーとか、レモンティーとミルクティーのような分け方になってしまいますから、ちょっと視点が変わりますね。
ここでは、日本茶は緑茶にあたりますし、様々な紅茶も発酵茶とひとくくりにされています。
チャの種はひとつです。
同じ茶の葉から、製法によって、ここでは緑茶と紅茶と烏龍茶を分けています。
細かくいうと、チャという種は、中国種(var. sinensis)とアッサム種(var. assamica)の2変種に分かれます。
日本でもおなじみの低木(4m以下)の中国種と異なり、紅茶に適すると言われるアッサム種は葉が大きくて樹高も最高10m以上にまで生長します。一方、寒さには弱く、インドやスリランカなどの熱帯地方で多く栽培されています。実際にはこの2変種は交雑可能なため、雑種も多いようです。
不発酵茶と発酵茶で、具体的な製法上の違いというのは、製茶の過程で、摘採した茶葉をまず最初に加熱処理して発酵を止めるのが不発酵茶で,萎凋・揉捻〜玉解(もしくはCTC加工)・篩分けさせて発酵し、後に加熱乾燥するのが発酵茶になります。
発酵というのは,生葉中の酵素による茶葉成分の酸化反応のことで、微生物によるものではありません。
主としてタンニン(カテキン)の酸化によるもので、カテキンは酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)の作用を受けて酸化・重合します。
カテキンの酸化により大量のキノンが生成され、キノンと茶に蓄積されている高い濃度のアミノ酸が、ストレッカー反応により縮合・分解して各種のアルデヒドを生成します。
このときに生ずる色素テアフラビンは鮮やかな橙赤色です。またテアルビジンという赤紅色の色素も多く生成されます。この二つの色素化合物の他にもカテキンのさらに酸化・重合が進んだ褐色の成分もあります。これらが紅茶の水色(すいしょく)が紅くなる原因です。
烏龍茶の水色も同様ですが、紅茶にくらべると発酵を途中で止めてしまうため、テアフラビンが紅茶より少なく、茶褐色となります。
烏龍茶の葉はたいてい3分の1ほど発酵したところで加熱乾燥し発酵を止めてしまいます。このため半発酵茶と呼ばれます。
(台湾のシャンピン烏龍茶については7割程度まで発酵を進めますが、他の多くの半発酵茶−武威岩茶や包種茶は3割程度です。)
また、発酵が進むと、酸化されたカテキンが大量に蓄積し、様々な反応が進んでいきます。このような反応のなかで揮発性の香気成分が大きく増加します。
緑茶に比べて、紅茶や烏龍茶は香気成分がはるかに多いわけです。
これらの香りを楽しまずに殺してしまうアップルティーやアールグレイなどの着香茶は、実にもったいないと、ぼくは思います。まあ、品質の低い茶葉を玄米茶にまわすのと同じようなことが着香茶にもいえるのではないかと思います。
なお、茶の原産地で喫茶の生まれた中国では、たとえば次のような分け方をしています。
さすがに的確で、しかも分かりやすい分類になっています。
まず、普通のお茶と、混ぜものなどの再加工をしたものに分けています。
たとえば、「FAUCHONのアップルティー」なら、再加工茶の果味茶になるわけです。
喫茶店メニューでいうシャリマティーやロシアンティーも、再加工茶類に入ってくると思います。
先ほどの分類でいえば、紅茶=発酵茶、青茶=半発酵茶、緑茶・黄茶=不発酵茶となります。
なお、黒茶は、後醗酵茶とでもいうか、緑茶に麹カビを繁殖させたものです。
香港式の飲茶とともに日本でも普及してきています。当然のことながら、カビ臭いです。
また、白茶は白毛の多い芽だけをつんだもので、生産量が少ないため高価ですが、お茶としてのおいしさは皆無です。日本でも売られていますが、値段が高いのを理由に買う人が多いようです。
市販の紅茶(たとえば、ハロッズの14番とか、リプトンの青缶とか)は、生産地の異なる原料茶をブレンドしたものです。
そして、茶という農産物は産地の気象条件によって、明白に品質・性格の違ったものになります。
この、産地ごとの個性の違いをまず知ることが、紅茶を知る第一歩だと思います。
手近なひとつのブランド製品をとりあげて「わたしの好きな紅茶」というだけでは、あまりにももったいない話だと思います。
「オレンジペコ」という商品名(ブランド名)のブレンド茶がありますが、この名前は紅茶の茶葉がどれくらいの細かさに切られているかという等級区分のひとつから拝借した名前です。
これに、T(Tippy)G(Golden)F(Flowery)等の修飾がつくことがありますが、この修飾と茶葉の品質とは無関係です。
また、CTCというのは製法のことで、Crushing Tearing Curlingの頭文字をとったものです。
CTC機の2つの回転数の違うローラーの間に茶葉をまきこんで押しつぶし・引き裂き・ひねり丸めながら、急速に茶葉を1mm程度の粒に加工していくものです。
CTC製法でも、同様にサイズによる等級区分があります。例えば、
と、いった感じです。