「電氣ブラン」というハードカバーの単行本が東京三世社から出たのが、彼女の最初の作品集でした。
そのころから、全ての作品の完成度の高さは恐ろしいくらいでしたし、人真似ばかりの世界の中で、画風も自分のものを持っていました。
今も「電氣ブラン」は、ぼくの大事な一冊です。
中でも、「晩餐」という作品。
主人公の少女清(セイ)は、一人毎日庭に穴を掘ります。死んだおじいちゃんの最後の予言、「空から恐ろしい何かが降ってくる。」「それが最後の兆しだ。」にそなえて。
近所の人の「子供のくせして偏屈になったわねっ」「まったくジイサン似だよあの娘は!」の言葉に、周りの世界に背を向けてただ一人穴を掘る。
丸刈太(マルガリータ)という小学生が穴を掘るセイに近づき、覗きこみます。「何してるの?」「穴ほってるの?」「ねーねーボクも手伝ってあげよっか」「いらない」「ボクねえ花壇係なんだよ」「いいったら!」滑って穴の中に落ちた丸刈太のドロを落とすため、清はイライラしながら水道まで連れて行きます。「・・・まったく時間がないのに!」
「みんな死んじゃうんだから」「どんどん歪んでいくこの世界をコナゴナに壊してくれるもの」と、最後の兆しを待つ清。
丸刈太はそんな清のところに毎日顔を出します。
・・・
また、「黄金虫」と言う作品。
錬金術師の道に進む少女の、受験直前の不安定な気持ち。錬金術材料の店で、赤ちゃんを抱いたおばあさんは言います。
「あたしたちが分身になるよ・・・
何も考えない
この赤子と
何もかも考え尽くした
この老婆が
もがいてるあんたの
心の端と端を
しっかりつかまえて
どれだけ揺れても大丈夫な
足場をつくってあげる」
須藤さんのホームページで知ったぼくは、喜び勇んで会場の「まるゲ屋」に向かいました。
卓上カレンダーを購入して整理券をもらい、近くの龍龍軒で昼飯をすませて開始時間の14時に再び会場へ。
ちょっと遅れて会場に来た須藤真澄先生は、数年前に吉祥寺の「まんがの森」でサイン会をしたときと変わらずお美しかったです。少しだけやせたかな。
さて、ぼくは整理番号50番でした。サイン会は14時から16時の予定でしたけれど・・・16時半を回っても順番がきません。
なにしろ、ひとり一人の色紙に、丁寧に絵を描いてくれるのです。
普通、サイン会って、名前をさらさらと書いて終わるものですけれども、須藤真澄さんはリクエストされたキャラクターを丁寧に書き、(髪の毛のベタ塗りまでしたりするのです)さらにおまけにネコの「ゆず」を描きこみ、背景まで描いてくれるものですから、時間がかかるのです。
ぼくもAQUARIUMの杢子ちゃんをお願いしました。
「どの?」「大人の」「一番大人の」
とても丁寧に描いていただいて、背景にはおさかなまで。握手もしていただき、感涙ものでした。もう、宝物です。
さっそく部屋の真中に飾っています。
本当にありがとうございました。嬉しいです!\(^o^)/
「電氣ブラン」
東京三世社
絶版となりました。以下が新版です。
「電気ブラン」
竹書房
ISBN4-8124-5027-6
「アクアリウム AQUARIUM」
新声社
ISBN4-88199-110-8
CD-ROM「バザール 〔須藤真澄の世界〕」
発売元:パイオニアLDC
製作:スタジオオルフェ、電脳商会