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須藤真澄

手抜き一つない完璧な漫画の天才


電氣ブランからAQUARIUM

「電氣ブラン」というハードカバーの単行本が東京三世社から出たのが、彼女の最初の作品集でした。
そのころから、全ての作品の完成度の高さは恐ろしいくらいでしたし、人真似ばかりの世界の中で、画風も自分のものを持っていました。
今も「電氣ブラン」は、ぼくの大事な一冊です。
中でも、「晩餐」という作品。
主人公の少女清(セイ)は、一人毎日庭に穴を掘ります。死んだおじいちゃんの最後の予言、「空から恐ろしい何かが降ってくる。」「それが最後の兆しだ。」にそなえて。
近所の人の「子供のくせして偏屈になったわねっ」「まったくジイサン似だよあの娘は!」の言葉に、周りの世界に背を向けてただ一人穴を掘る。
丸刈太(マルガリータ)という小学生が穴を掘るセイに近づき、覗きこみます。「何してるの?」「穴ほってるの?」「ねーねーボクも手伝ってあげよっか」「いらない」「ボクねえ花壇係なんだよ」「いいったら!」滑って穴の中に落ちた丸刈太のドロを落とすため、清はイライラしながら水道まで連れて行きます。「・・・まったく時間がないのに!」
「みんな死んじゃうんだから」「どんどん歪んでいくこの世界をコナゴナに壊してくれるもの」と、最後の兆しを待つ清。
丸刈太はそんな清のところに毎日顔を出します。
・・・

また、「黄金虫」と言う作品。
錬金術師の道に進む少女の、受験直前の不安定な気持ち。錬金術材料の店で、赤ちゃんを抱いたおばあさんは言います。

「あたしたちが分身になるよ
何も考えない
この赤子と
何もかも考え尽くした
この老婆が
もがいてるあんたの
心の端と端を
しっかりつかまえて
どれだけ揺れても大丈夫な
足場をつくってあげる」
・・・

昭和60年に出たとき、もうこの人の作品は二度と読めないかもしれないと恐怖したのを覚えています。
実際には、現在も大人気活躍中で、嬉しいです。

なかんずく、1994年に単行本にまとめられた「AQUARIUM[アクアリウム]」は、ぼくも大好きなすばらしい、素晴らしい作品です。
1998年12月19日公開で映画化もされました。

これは万人におすすめなので、内容は読んでください、とだけ。


11月21日、須藤真澄さんのサイン会が行なわれる!

須藤さんのホームページで知ったぼくは、喜び勇んで会場の「まるゲ屋」に向かいました。
卓上カレンダーを購入して整理券をもらい、近くの龍龍軒で昼飯をすませて開始時間の14時に再び会場へ。
ちょっと遅れて会場に来た須藤真澄先生は、数年前に吉祥寺の「まんがの森」でサイン会をしたときと変わらずお美しかったです。少しだけやせたかな。
さて、ぼくは整理番号50番でした。サイン会は14時から16時の予定でしたけれど・・・16時半を回っても順番がきません。
なにしろ、ひとり一人の色紙に、丁寧に絵を描いてくれるのです。
普通、サイン会って、名前をさらさらと書いて終わるものですけれども、須藤真澄さんはリクエストされたキャラクターを丁寧に書き、(髪の毛のベタ塗りまでしたりするのです)さらにおまけにネコの「ゆず」を描きこみ、背景まで描いてくれるものですから、時間がかかるのです。
ぼくもAQUARIUMの杢子ちゃんをお願いしました。
「どの?」「大人の」「一番大人の」
とても丁寧に描いていただいて、背景にはおさかなまで。握手もしていただき、感涙ものでした。もう、宝物です。
さっそく部屋の真中に飾っています。

本当にありがとうございました。嬉しいです!\(^o^)/


「電氣ブラン」
東京三世社
絶版となりました。以下が新版です。

「電気ブラン」
竹書房
ISBN4-8124-5027-6

「アクアリウム AQUARIUM」
新声社
ISBN4-88199-110-8

CD-ROM「バザール 〔須藤真澄の世界〕」
発売元:パイオニアLDC
製作:スタジオオルフェ、電脳商会

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文市(あやち)=青野宣昭