ペンノートPCという分野は、各メーカーとも企業向けに販売してきた分野です。
これを個人で熱烈に欲しがるのは、とりわけ「お絵描き」をしたい人ではないかと思います。
三菱電機株式会社は従来企業向けに出していたAMITYシリーズがWindows95対応になった機種AMITY SPを一般に市販しました。
ところがこの機種はあまり売れなかったのでしょう、ほどなく販売終了となってしましました。
ぼくもAMITY SPを入手したのですが、実用的にお絵描きをするにはいくつもの問題がありました。
それでも当時は他に選択肢がなかったのです。市販している、ということももちろんですけれど、なにより、他メーカーのペンノートマシンのような感圧式ではなく、電磁誘導式である必要があったからです。
感圧式だと掌が画面に触れるとそれをタップとして検出してしまうのです。また、タブレットによっては精度が電磁誘導式に比べて劣る物も見受けられました。
使い勝手の面でも、電磁誘導式では、ペンが画面に触れていなくても、マウスカーソルが追従していきます。このため、画面に傷がつきにくく、マウスカーソルの移動とドラッグが明瞭に区別できます。
さらに、筆圧感知機能があるとないとではお絵描きのしやすさが段違いです。
実際、お絵描きといえば一番に名前のあがるワコムのタブレットは電磁誘導式で筆圧感知機能があります。
AMITYシリーズとIBMのThinkPad730TEにはこのワコムのOEMと思われるタブレットが内蔵されています。
ここで、IBMのThinkPad730に触れておきましょう。この機種はぼくも買いました。モノクロ画面、Windows3.1という仕様ですが、逆にその範囲内でお絵描きする分にはなかなか使えるマシンでした。
DOSはPenDOSではないため、Windows3.1を終了させるとなにも操作ができなくなるところがおちゃめです。
PCカードスロットが三つ内蔵されており、そのうちの一つがシステムディスクとなってブートする構造になっています。
PCカードブートなのでHDDを取り替えれば環境をまるまる切り換えられます。
AMITY SPではシステムディスクにあたるTYPE III HDDはめかくし板で隠され、そのまま簡単に交換できませんから、TP730TEの方が開かれた環境といえるかもしれません。
AMITY SPとの最大の違いはその筐体の頑丈で大きく重いことと、モノクロであることでしょう。
頑丈さはさすがIBMです。AMITY SPの冗談のような華奢さはしっかりした品質基準を設けたメーカーではクリアできないように思います。
TP730TEの液晶はタブレットに覆われていることもあり、暗く見にくいものです。バックライトを点燈しておかないとつらいかもしれません。電池は充電式のニッカド電池で、つぎたし充電をしているとメモリ効果が心配です。
けれど、電磁誘導式のペンは正確なポインタが可能で、マシンパワーもWindows3.1という比較的軽いシステムのためにペイントブラシでお絵描きをするには充分なものでした。
TP730TEの重さは持ち歩くことはもちろん、片手で持ってお絵描きするにも腕の疲労を招くものでした。
その点、AMITY SPは超軽量で薄くできていました。しかも、カラーです。
AMITY SPの筐体の堅牢性が足りないという欠点はすでに触れましたが、お絵描きする上での問題は他の面で明らかになってしまいました。
まず、486の75MHzではWindows95上の重いグラフィックソフトを動かすにはパワー不足だという点、そして、HDDがPCカードのTYPE IIIのみであったため、当時340MBが最大容量であった点、そしてPCカードのHDDの速度では、ブート時も画像処理時のスワップ等も遅く感じられてしまうのです。
SPの実用性の限界に悩まされていたわけですが、AMITYに新機種という発表は大変な期待をもたせてくれるものでした。
PCカードでなく、ノートPCでは一般的なIDEの2.5インチHDDを採用しているらしいこと、マシンスペックも充分に上がっていることは、筐体の厚みが増して携帯性が落ちたことを補って余りあるものだと感じたものです。
筐体の厚さと重量は、ThinkPad730TEのことを思えばまだまだ充分小さく感じられる物でした。
しかし、大きな問題がありました。
AMITY SPの売れ行きや販売体制の教訓か、三菱電機株式会社は一般への販売は行わず、企業向けに限定してしまったのです。実際、SPを扱っていた秋葉原の大手パソコンショップには入荷の予定は一切ありませんでした。もっとも、どのショップでももてあましたSPの残り在庫を極端な値下げをして叩き売ろうとしていた最中でしたから、売れ行きはあまりよくなかったのでしょうね。
ぼくはある筋から入手できました。
どうしてもAMITY VPが欲しければ、三菱電機株式会社に電話してどうしても個人向けに売るよう強く交渉すれば、個別対応で販売会社を紹介してくれるのではないかと思います。
そして手にしたVPは・・・
ここから先は、KISSちゃんの電脳水族園に行ってもらうのが一番だと思います。
世界一AMITY VPの情報に詳しいサイトです。もちろん、三菱電機株式会社よりもはるかに、です。
きっと、はるかに亜美ちゃんへの愛にあふれているからだと思います。
ひとつだけ触れておくと、Windows95という、操作が面倒なGUIも、ペンオペレーションで使う分にはしごく使い良く感じるということです。
もちろん、電磁誘導式であることは前提ですけれども。
マウスなどとは比較にならない直感的なわかりやすさです。
その意味で、今後、ペンマシンは間違いなく伸びると思います。
ペンマシンAMITY VPの勇姿